――かなり挑戦的な内容にも思える原作ですが、原作の印象からお聞かせください。
クラブによってはサッカー漫画を普段から置いてあるところもあるので、選手たちで読んでいる人も多いと思います。僕は子供がいるのでTVアニメを一緒に楽しく見ていました。内容についても僕はすごく面白いと思っています。確かに日本はワールドカップで優勝したことがないし、優勝を目指すために優秀なストライカーが必要というのも事実。原作は2018年頃から書かれていたと聞いていますが、その少し後くらいからJFA(公益財団法人日本サッカー協会)は、強いストライカーを育てるため実際にストライカーだけの合宿を始めたりしていました。ひと昔前は、日本から海外に行く選手はMF(ミッドフィルダー)が多かったんです。でも今はどのポジションでも海外でプレーして活躍されている人はたくさんいますし、身長が高い人が増えて優秀なCF(センターフォワード)もたくさんいるような時代です。より高みを目指すためには、選手が個人の力で得点力を上げられるようにならないとダメだと僕は思いますね。ポーランドにロベルト・レヴァンドフスキというすごいCFの選手がいるのですが、その選手がいることでチームとしてはそれほど強くなくても世界ランキングの順位が5位まで上がったこともあります。そう思うとストライカーって改めて大事だなと思うし、この原作も核心を突いているなと思う。僕は漫画が大好きなので、日本のサッカー漫画は日本サッカーを支えてるとすら思っています。ある意味、時代の最先端をいっているのが漫画なんですよ。
――原作に度々登場する“エゴイズム”については、どのように感じられましたか?
今までの日本のサッカーは、エゴをなくしていくものだったと思います。僕の現役時代もそうですが、皆で、チームでがんばっていくというのが主流だった。1人1人に力があってもチームがバラバラになってしまっては勝てないので、全員で一丸となっていこうみたいな意識が日本代表にもあったような気がします。そんな時代を経て、今まさにエゴイストが必要な時代がすぐそこまで来ていると個人的には思います。サッカーってファッションと同じで、(考え方に)いろんな流行りがあるんですよ。めぐりめぐって今はそういう時代なんじゃないかな。極論を言うと、サッカー漫画はいつも時代を正しく先取りしてくれるので、僕らも漫画のストーリーに沿っていけばうまくいくんじゃないかなと思っています(笑)。
――本当に漫画がお好きなんですね。
ほとんどのサッカー漫画と言われるものは読んできていると思います。『キャプテン翼』から始まり、『イレブン』、『ホイッスル!』、『シュート!』、『VIVA!CALCIO』『オフサイド』…最近だと『アオアシ』も読んでいます。だから今回『ブルーロック』の実写映画化のサッカー監修というものをやらせていただけるということは、すごく嬉しかったですね。
――撮影前の練習期間から参加されていたのですか。
キャストがはっきりと決まる前にお話をいただいていました。僕自身こういった監修は初めての経験だったので、誰がどの役を演じるかも分からないまま、どんな感じで進めていけばいいのかすべて手探りの状態からのスタートでした。
――製作陣からの具体的な依頼はどんな内容だったのしょうか。
原作に沿ったキャラクター作りですね。各キャラクターの特徴的な技…シュートやトラップなどに付随したものを練習期間から教えてあげてくださいと。それにはまず基礎がないと無理。最初にサッカー経験者、未経験者すべての方の土台の基礎力を上げていくみたいな作業が多かったように思います。
――当然ですがレベルもまちまちの中からのスタートですよね。
そこが一番難しいところではありました。中にはサッカーボールに一度も触ったことがない方もいたので、最初は正直心配でした。皆さん本業があるので、あまりハードなトレーニングをし過ぎてケガをされても困る。そのためにはまず体力をつけようということで、とりあえず朝ごはんを食べてこない方が多かったので、食べるようにしてくださいと。そこから様子を見つつ、いろんなトレーニング法を提案してみました。技術的なことはもちろん、基本的なサッカーのレベルを上げることは必須だったので、同時進行で体力をつけてください!と。先に体力作りをやってから、その後キャラクターに合わせたそれぞれの練習に移行していきました。具体的にはキャラクターに合わせたシュート練習、手の位置や足の動かし方などサッカーの所作を教えるということです。シュートのフォームはとにかく綺麗にしてくださいというのは、しつこく言わせてもらいました。体作りに関してはフィジカルのコーチが別にいらっしゃったので、そちらにお任せして。役者さんによっては、かなり増量した方もいたんじゃないかな。
――主演の高橋文哉さんの印象もお聞かせください。
最初は主人公だし、当然サッカー経験者が来られるんだろうなと思っていたんです。でも文哉くんはサッカーは未経験と聞いて、「大丈夫かな?」と不安になったのを覚えています。ただ初めてお会いした時に彼のやる気がすごくて、「この作品を絶対に成功させるんだ!」という想いの強さを感じた。そこで「大丈夫かもしれない」と思いました。実際練習を重ねるうちにどんどんうまくなっていって、「これなら大丈夫だ」という確信に変わっていきました。彼は全メンバーの中で一番成長したんじゃないかなと思います。もともと運動神経自体はとてもよかったです。
――潔として一番大事にした動きなどはありますか?
潔は空間認識能力とダイレクトシュートが特徴なので、常に周りを俯瞰で見られるようなキャラクターにしようということで、「顔を振ってください」とはよく言っていました。ボールを保持していてもちゃんと顔が上がっているように意識してもらいました。でも僕が言うまでもなく、文哉くんは潔のことをちゃんと分かっていたので、自然とできていたことはたくさんある。実際ボレーもうまかったです。ほとんどのキャストの方が自分のキャラを深く理解されてプレーされていたので、僕からはちょっとした動きの修正くらいだったと思います。
――いろんな生徒さんを教えられてきて、「この人は伸びるな」という直感などはありますか?
ありますね。それこそ小中学生、高校生、大学生、プロとすべてのカテゴリーの人を見てきていますが、「この人はうまくなるだろうな」というのは基礎的な動きを見た時に分かるんです。文哉くんに関しては早い段階でそう感じましたが、こちらの想像以上にうまくなったので正直驚いています。何かしらを成し遂げようとしている人というのは、文哉くんに限らずすごいんだなと。役者さんってすごいんだなと今回改めて思いました。
――素人考えで恐縮ですが、生まれもったセンスのようなものも必要なのでしょうか。
必要ですね。それで言うと文哉くんはもちろん、今回のキャストの方はセンスがある人がとても多かったです。でもセンスよりも、やっぱり情熱の方が大事な気が僕はしていて。「負けたくない!」「強くなりたい!」という気持ちが大きい人は、絶対に伸びます。勉強も同じなんじゃないかな。吸収しようとアンテナを立てている人の方が成績が上がるじゃないですか。そのためにはサッカーに興味を持ってほしかったし、練習も面白く楽しくやってほしかったので、皆さんの興味が湧く方向に練習内容もシフトチェンジしました。最初の頃は本当にきついメニューばかりやってもらっていたんですよ。体力をつけるために、とにかくめちゃくちゃ走ってもらって…。でも僕自身走るだけの練習は嫌でしたし(笑)、「基礎ばっかりで面白くないな」って思っていた時期があるので、途中からゲーム要素を組み込んでいったんです。練習を楽しくしてもらって、サッカーを好きになってくださいという気持ちでメニューを作っていきました。
――それはどのような練習メニューでしょうか?
ボールも何も持たずにただ走るのが一番きついので、鬼ごっこの要素を入れました。鬼ごっこが一番サッカーっぽい動きなんですよ。相手がいるとよけないといけないから、それがフェイントの練習にもなる。いろんなステップを使って相手をかわしていったりするし、相手を追うことで体力もつくんです。それをボールと一緒にやると楽しいかなと思って、積極的に取り入れていきました。
――キャスト陣の動きは目に見えて変わっていきましたか?
最初の走り込みはだいぶきつかったと思いますが、それを乗り越えてからはどんどんよくなっていきましたね。キャストの方たちからよく質問されたのは、“オフ・ザ・ボール”といってボールを持っていない状態の時に、「どういう動き方をしたらいいか分からないんです」ということ。確かにこれはサッカー経験者でないと分からないことで、常にボールがある方に反応している動きがないといけないんです。これは基礎がないとできない動きなので、そのためにも基礎をちゃんとやりましょうと(笑)。見る人が見れば分かってしまいますから。あと全員に何度も言っていたのが、「かっこよくプレーしてください」ということ。やっぱりサッカーはかっこよくやってほしいんです(笑)。しかも『ブルーロック』って皆がかっこいいキャラクターなので、フォームにしてもちょっとした動きにしてもダサいのは嫌だなと。原作へのリスペクトですね。
――櫻井海音さん、高橋恭平さん、Kさんについてもお聞かせください。
海音くんは東京ヴェルディのジュニアユースにいた人ですから、当然めちゃくちゃうまかったです。蜂楽のプレーの見本を最初は僕がやって見せるんですが、どうしても人によってクセがあるので、そこからは彼のやりやすいようにアレンジしてもらっていいよというやり方でした。それくらい最初からレベルが高かったです。海音くんが他のキャストにいろいろと教えてあげたりしていたのは、今回すごく大きかったと思いますね。僕らに教えてもらうより横にいるチームメイトから教えてもらう方が、より成長するっていうのは絶対あると思う。
恭平くんはムードメーカー的な存在で、彼の周りを和ませる話術やフランクな雰囲気は練習の時にすごく助かりました。千切はもともと足をケガしているという設定なので、ランニング練習の時に少し前傾姿勢でやってみてもらったりと、細かい調整はさせてもらいました。でも以前に陸上選手の役をやっていたから、走り方は最初からすごくきれいでしたね。
Kくんは役的にかなり難しいプレーシーンが多かったので、最初は細かい動き方などはいろいろ助言させてもらいましたし、僕のプレー動画を送ったりしましたけど、最終的には僕から言うことはほとんどなくなりました。もともとのポテンシャルが高い方だったし、彼の中で凪という役を理解しながらプレーとすり合わせているのが分かったので安心して見ていました。
――キャストの皆さんは最終的にかなり仲良くなられていたとか。
めちゃくちゃ仲良かったです。常にキャッキャッと楽しそうでした(笑)。福島の撮影はリアルなサッカー合宿みたいだったんじゃないかな。皆で同じものを食べて、一緒のお風呂に入って…。僕は他の仕事で途中現場を離れていたんですが、久しぶりに撮影を見に行ったら皆すごく成長していて「めっちゃうまくなってるじゃん!」と本人たちにも言ったくらい。それぞれがキャラクターに寄ってきていたし、本当にチームワークができていて「『ブルーロック』だ!」と嬉しかったのを覚えています。
――今回の製作陣のこだわりのひとつが、「生身の人間ができるギリギリのスーパープレー」ということだそうですね。
僕ができないプレーはできないなって思っていました。逆に言うと僕ができるんだから、役者さんたちもできるよとがんばってもらったんですけど(笑)。実際原作に出てくるプレーは全部できるものではあるので、皆さんもやれば形になると思います(!?)。「できる!」という気持ちが一番大事ですから!
――改めて監修として参加した本作を振り返られて今、思うことは?
本当にギリギリを攻めた作品だと思います。僕は監修としてしか関わっていませんが、これまで誰もやったことのないことに手探りでチャレンジして、ここまでの映像を作り上げた役者さん、スタッフさんは大変だっただろうなと。改めてすごい作品に関われたんだなと思っています。
――文字通り命をかけて戦う潔たちの姿に、共感する部分はありますか?
自分の高校時代を思い出しましたね。本当にサッカー漬けの日々だったし、リアルなブルーロックの中にいたような時間でしたから(苦笑)。今は理不尽なことに対してただ我慢するような時代ではないと思うんですが、僕としては逆境や壁にぶち当たることは悪いことではないと思っています。そういう時こそいろんなことを考えるし、その壁を乗り越えた時、必ず成長できるんだということを身をもって経験しました。『ブルーロック』のキャラクターたちも、ここで脱落したら終わると思っていると思うけど、脱落したところが実は出発地点でもあるんですよね。その後の時間がすごく大事だし、そこから自分がどんな風に生きていくか。それが人生だよなと思ったりしました。
――観客に本作がどのように届くことを期待しますか?
サッカー好きに見てもらいたいのはもちろんですが、とにかくいろんな方に見てもらいたいです。原作が好きな方、キャストが好きな方、キャラクターが好きな方……いろんな応援の仕方があると思う。それぞれの見方をご自身で探してもらって、とにかく楽しんでもらえれば嬉しいです。
COMMENTS
原作金城 宗幸
ついに発表されましたね!
とんでもなく熱いキャストさん達!
そしてこのラインナップを揃えた製作陣!エゴイスト過ぎる。
改めて、ありがとうございます!
撮影見学も行かせていただいて驚いたのが、みんな仲良し!
でも撮影が始まると、みんなバチバチ…!
「本当に“青い監獄(ブルーロック)”があったらこんな感じかも」と思える現場で、作品を愛して作ってくださってるなぁと感じて、最高でした!
皆さんの手で新しい化学反応が起こる、この映画『ブルーロック』。
劇場で観られる日をとても楽しみにしております!
漫画ノ村 優介
昨年末に撮影見学に行かせてもらいましたが、現場の雰囲気も良く、制作に関わる皆様が『ブルーロック』を大事にしてくれているのを感じ、とても嬉しくなったのを覚えています。
カメラが回っていなくても、役者の皆様がしっかりキャラの空気を纏っていて本当に感動しましたし、セットで演技される姿を見て、まさにここが〝青い監獄(ブルーロック)〟だと脳天をブチ抜かれたような気持ちにさせられました。最高の体験でした…!
すでに我々がこの実写映画の最初のファンですが、ぜひ映画を通してより多くの方々に『ブルーロック』を届けていただければと思います!!
潔 世一 役高橋 文哉
この度、映画『ブルーロック』で潔世一を演じさせていただきます高橋文哉です。
僕は、このお話をいただく前から原作の大ファンでありブルーロックの沼にドハマリしていた一人でした!
エゴというのは潜在的に誰しもの心の中にあるもの。
一人一人が相手とも自分とも戦っている姿に胸を打たれ、見れば見るほどもしこの作品が実写化されるのであれば潔世一を演じたいと心から思っていました。
そんな中、お話をいただいたのが約3年前のことで、サッカー未経験である自分を信じて、この大役を任せてくださったプロデューサーの松橋さんには本当に感謝しています。
ブルーロックの主演という大役を託された、約3年前から僕の日常にサッカーが入ってきました。
自分を潔世一にしてくれて、自分を信じて共に作品作りをしてくださったすべての皆様に感謝していますし、信じてくださった皆さんを裏切りたくないという強い気持ちから、ここまでブルーロックが頭から離れた日は一日もありません。
スタッフキャスト含め、原作へのリスペクトを胸に、出来ること出来ないことの線引きをすることなく、この作品に対する大きな愛と熱量と覚悟を持って撮影の日々を過ごしていました。 僕が今、成せることのすべてをこの作品に詰め込んで撮影を終え、その熱量と覚悟は自信に変わっています。
潔世一を演じる高橋文哉をいち早く皆さんに見て欲しいと思うこの気持ちが僕の中のエゴなんだと思います。
公開を是非楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです!
絵心 甚八 役窪田 正孝
絵心の使う言葉や考え方は偏りはあるけど、引力があって聞く者を魅了する。
サッカーを通して人間の本能に問いかけ続ける、彼の人生を賭けた証明に付き合ってみたいと原作を読んだ時感じました。
進化し続けるストライカーの皆さんの青い熱をぜひ劇場で感じて頂きたいです。
プロデューサー松橋 真三
実写映画化解禁時に、1,000人規模のオーディションを敢行したと発表しましたが、中には数名の、この人がいるなら映像化する意味がある!というキャスティングをしています。
高橋文哉さんのご活躍を目にして、スター性、演技力は申し分なく「彼が潔世一だったら」と思うようになり、面談させていただく段取りをとりました。彼には何の面談かは言わないで欲しいと伝えました。
私は、彼の人間性を知りたかったのです。これだけの人気原作ですから、プレッシャーもかかり、場合により批判にもさらされる可能性があります。それを跳ねのける誠実さ、優しさ、心の強さ、我知らず人を率いるリーダーシップがあるか。それが潔世一の持っているものだと思ったからです。お会いして、彼にはその全てが備わっていると感じました。
その後、1年半にも及ぶサッカーの特訓をして撮影に望み、見事その大役を果たしました。今は撮影が終わり作品の仕上げをしていますが、早く皆さんに完成する作品を観て欲しいと思っています。主人公がどのように成長していくか、それは潔の成長であり、高橋文哉の成長であると思っていただける素晴らしい作品が出来上がりつつあります。
ぜひ劇場の大スクリーンでそのストーリーをお楽しみください!
監督瀧 悠輔
ここにいるメンバーで新しい扉を開きたい。
脚本の読み合わせをした日、文哉くんが話したことをチーム Z の皆は覚えているだろうか。長期間に及ぶ練習、リアリティを求められる過酷なサッカー撮影。満身創痍になりながら現場に立ち続けた覚悟と熱は伝播して、ピッチに立つ全員がエゴイズムをまとって走り出していました。
日本中のブルーロックファンの皆様。どうか劇場で、彼らが巻き起こす青い熱狂を見届けてあげてください。よろしくお願いします。
サッカー監修松井 大輔
映画『ブルーロック』のサッカー監修として関わらせていただき、大変光栄に思っております。自分自身とても刺激を受けました。
俳優の皆さんは、熱量が本当に高く、どんな忙しい時でも、少しでも時間を作って、真剣に練習に向き合っており、上達しようとする姿は、まるで日本代表入りを目指すサッカー選手のようでとても印象的でした。
高橋文哉さんに初めてサッカー指導した日は、今では遠い昔のことのように思えます。 皆さんは、教えたことをトライ&エラーしながらもどんどん吸収し、上達していく姿を間近で観られたことは指導者冥利につきますし、とても幸せでした。 朝、撮影前のボール回しやリフティング対決を見てると、もう立派なサッカー経験者だと思います。
現場には、スタッフの方々の細やかな気配りもあり、強いチーム感と一体感があったと思います。
作品へのリスペクトが強く、深く、映画を素晴らしいものにしようと一切妥協しない姿勢は、僕自身も大変勉強になりました。
最後に、サッカー監修をした自分だから言えますが、映画『ブルーロック』は素晴らしい本格サッカー映画になったと思います。皆さん、公開を楽しみにお待ち下さい。